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閔妃(ミンビ)暗殺

 -朝鮮王朝末期の国母-
著者 : 角田(つのだ)房子
新潮文庫
新潮社 東京 1988
定価 本体 629円(税別)










 私がこの本をはじめて知ったのは、今から6年前の2011年、「釜山日語奉仕会」の研修の場だった。釜山日語奉仕会は地下鉄駅や観光地で日本語通訳のボランティアをしているグループで、毎週月曜日に日本語の本を輪読して日本語を勉強していた。私はこの輪読会にときどき参加していた。その輪読に取り上げられていたのがこの「閔妃暗殺」であった。

 私と釜山日語奉仕会との関係については「文集 私の韓国、私の日本」の後書きに触れているのでご参考までに。

 さて、本書は第26代朝鮮国王高宗の王妃閔妃が日本人の手によって暗殺された事件(1895年)の経過を日本及び韓国の資料を丹念に調べ上げて綴ったものである。この事件の後、1904年の日露戦争、1910年の日韓併合へとつながっていく。

 われわれ日本人は日朝関係の歴史をあまりにも知らなすぎるのではないかと思う。著者の「あとがき」を以下に紹介する。

 「『閔妃暗殺』をお読みくださる方々の一人でも多くが、どうぞ隣国への”遺憾の念”を持ち、それを基とした友好関係、相互理解を深めて下さるようにと、私は切に願っている。だが私は本書の中で、私個人のその願いには触れず、ましてそれを強いるような言葉は使わず、ただ事実を出来るだけ間違いなく書くことに専念した。」

 「覚悟していたことだが、日本にとっての”恥”が次々に現れて、私にとってはつらい仕事だった。しかし、”恥”の部分があればこそ私たち日本人はそれを知らねばならない――と私は心を決した。」

 (当時の西ドイツヴァイツゼッカー大統領の演説を引用しながら)「『われわれドイツ人全員が過去に対する責任を負わされている・・・・・後になって過去を変えたり、起こらなかったことにするわけにはいかない・・・・・過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる』という一節を繰り返し読んで勇気づけられた日を、今も私は記憶している。”ナチスの時代”という過去を持つ西ドイツの首脳たちは、それまでにも何度か同じ主旨の演説を行っている。だが日本で大衆に向かって、このような主旨の呼びかけが行われたことは一度もなかったように思う。・・・・・わが国では、戦争責任の追及も、戦後責任のとり方も曖昧で、これらは好まれない話題のようである。」


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