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日本による朝鮮支配の40年


著者 : 姜 在彦
朝日文庫
朝日新聞社 東京 1992
定価 500円(本体485円)










 著者の姜在彦という人の名前は司馬遼太郎の「耽羅紀行」を読んで初めて知った。司馬は著者を「姜在彦氏は、まれにみる愛国者である。大韓民国と朝鮮民主主義共和国というふたつに裂けた国情の中で、愛国者であることをつづけるのは、孤独であるほかない。」と紹介する。

 著者は書名の通り、日本による朝鮮支配の40年を感情的にならず、その支配と被支配、加害と被害の実態を必要な資料を示しながら事実に即して「淡々」と語っている。それだから一層読者の心に訴えるものがある。ある人は「敗北史観」というが、事実を知れば知るほど日本の暴虐ぶりを反省せざるを得ない。日本人は事実にもっと素直になるべきだと思う、というか、今となっては戦後生まれの人が圧倒的に多いので、まずはこのような著書を読んで、この近い過去の事実を知らなければならないと思う。日朝、日韓の友好は、これが基礎になると思う。加害と被害の関係にはそれだけの重みがある。

 著者は教科書問題に関連して、「その程度の歴史教育では朝鮮に対する日本の侵略と支配について最低限の史実すら把握できないばかりでなく、その下で呻吟した朝鮮民衆の心の傷を理解できるはずはありません」という。

 著者は「日本と朝鮮との間には、かつて支配と被支配、加害と被害の不幸な歴史があっただけに、その後遺症として不毛な偏見と反発の泥沼に足をとられているのが現状ではないでしょうか。今こそわれわれは、そのような偏見と反発のルーツになっている歴史的背景を直視し、問題を整理してみる必要があるように思います」と提起している。

 本書は、1982年の大阪の朝日カルチャーセンターでの話しを書籍化したものである。


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