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韓国は一個の哲学である

 <理>と<気>の社会システム
著者 : 小倉紀蔵
講談社現代新書 1430
講談社 東京 1998
定価 本体700円(税別)










 「理」と「気」、私には聞き慣れない言葉だ。

 「朝鮮時代の朱子学的人間観・自然観は、<理>と<気>で説明される。」「<理>とは、今の言葉でいえば真理・原理・倫理・論理・心理・生理・物理・・・・などの総称である。」「<気>というのは、今の言葉でいえば、物質性だ。」「<理>は形而上の原理で、<気>は形而下の素材である。だから人間も<理>と<気>が合体してできている。その肉体は<気>で、人間としての道徳性が<理>である。」

 何だか難しいが、この<理>と<気>から日韓の諸問題を解明しているのが本書であろう。われわれが困ったと思う問題もこの<理>と<気>から理解すれば、ああ、そうなんだと思えるところがある。

 率直に言って、「物差し」の違いではないかとも思える。

 著者はいう。
 「韓国を対等の相手と見なさない根強い姿勢、想像力と包容力と倫理とを欠いた政治家や一部国民の心狭い発想、日韓の過去と日本人の罪に無知で無関心な多くの人たち・・・・・。
 これは日本人自身が変革してゆかねばならないのだ。過去を清算しうるための努力を継続してゆかぬ限り、志向すべき未来など一向にやって来ないであろう。
 日韓関係は困難ではあるが、私たちはこの諸問題を、必ず克服せずして止むことは許されぬ。隣国との難しい関係を克服した時、初めて、私たちは世界を正視しうるであろう。」


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