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韓国とキリスト教

 いかにして"国家的宗教"になりえたか
著者 : 浅見雅一 安廷苑
中公新書 2173
中央公論新社 東京 2012
定価 本体780円+税










 韓国を旅された方はお気づきのことと思うが、十字架があちこちに目撃される。今年(2017年)鬱陵島の天府というところに行ったが、そこは住人が100人もいるだろうかというような小さな集落であったが、教会の十字架が四本も立っていた。十字架だから、そこは多分キリスト教の教会だと思うが、なぜ韓国にそのように教会が多いのか以前から不思議に思っていた。

 本書はその疑問に答えてくれる。それによると韓国へのキリスト教浸透の要因に次の四つだという。

1)韓国の原信仰が一神教的要素を持っていたので、一神教であるキリスト教を受容する下地となった。
2)朝鮮王朝の朱子学の理気二元論は、キリスト教の世界観に類似する点があった。
3)儒教の倫理を重視する姿勢が、キリスト教の倫理への接近を容易にした。
4)植民地時代にキリスト教が抗日独立運動の精神的支柱になっていた。

4)については、「キリスト教が「独立」という政治目標、そして「民族的苦難」から救われる選民思想に結びついたことによって、民族意識を覚醒させることが可能となったのである。そこから、キリスト教が韓国の民俗宗教としての色彩を帯びていったのである。」としている。

 本書に出ている2005年の統計調査では、宗教を信仰している人は全人口の53.1%で、その内、人口比で仏教は22.8%、プロテスタント18.3%、カトリック10.9%という数字を上げている。従って、キリスト教徒の全人口に占める割合は29.2%である。

 その他に、日本由来の宗教やオカルト宗教についても触れている。

 韓国の人々を理解するための好著であると思う。


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